四国でお遍路! 車中泊で「くるま旅」
2023年10月11月の2回にわけて延べ1ヶ月、車中泊で四国八十八カ所のお遍路と和歌山県の高野山へ行きました。
個人的な願掛けと以前から、お遍路文化に触れてみたかったこと、石鎚山、剣山登山、観光を兼ねての「くるま旅でのお遍路」でした。
じっくりお寺の歴史や造り、地域の街並みにも触れたかったので、1日3~4寺ぐらいのペースでゆっくりとお詣りしました。
お遍路とは?
お大師さま(弘法大師・空海)が修行していた四国で八十八ヶ所の寺院を選び霊場を開いたと伝えられます。その八十八ヶ所を巡礼することを「お遍路」といい、当初は修行僧等が中心でしたが、お大師さま信仰が高まり江戸時代に多くの庶民に広がりました。
1,400kmにも及ぶ道中で自分と向き合い、人が持つとされる88の煩悩を消し、心清らかに功徳を積むことで「結願(けちがん)」するとされ、年間約15万人の方々が巡っています。
八十八ヶ所の巡礼が終わると、お大師さまが今も瞑想していると言われる「高野山 奥の院」にお礼参りに行きます。
「ありがたや 高野の山の岩かげに 大師はいまだ おわしますなる」
お遍路の目的
家内安全、健康祈願、先祖供養、自分を見つめ直すなど、目的は人それぞれですが、正直、お遍路は相当の時間や労力、気力、費用を必要とすると感じます。
それでも、次回、お遍路する際には「歩き遍路」又は「自転車遍路」で巡りたいと考えています。
約1ヶ月の「お遍路」でしたが、歩きや自転車のスピードで巡ることで「くるま遍路」では見えなかった景色が見えたり、多くの人との出会い、自分と向き合う時間が増える事で新たに見えるものがあると思えるほど、すっかり「お遍路旅」に魅了されてしまいました。
お遍路の移動手段
お遍路の巡り方に決まりは無いので、「歩き」「くるま」「バイク」「自転車」「タクシー」等々、それぞれのスタイルでお遍路旅をします。お寺では外国人の方や若い方も多く、すれ違った歩き遍路のおよそ1/3前後の人は外国人の方でした。
私もお遍路を通じ、宗教的な意味合いの旅、そして四国の文化・自然を多く体感できる旅として、確かな魅力があると感じました。
①「順打ち」1番寺~88番寺を順番に巡ること
②「逆打ち」88番寺~1番寺を逆に巡ること
うるう年の逆打ちはご利益が3倍と言われます
③「通し打ち」1回で1~88番までの寺を巡ること
④「区切り打ち」何回かに別けて巡ること
お寺を「札所」と言い、お寺を巡ることを「打つ」と言います。
お遍路に必要なものは?
私は1番札所「霊山寺」で教えて頂き、下記の準備品でスタートしました。
<揃えたもの>
①白衣(袖なし)(道中着)
②輪袈裟(略礼服として肩からかける)
③念珠(自身の宗派の数珠でも良い ※持参)
④納め札(本堂・太子堂の納札箱へ)
⑤納経帳(納経の証として御朱印を頂く)
⑥仏前勤行法則 経本(般若心経等が記載)
⑦ご本尊御影保存帳(仏様の御影を納める)
⑧線香(本堂・太子堂各3本)
⑨ロウソク(本堂・太子堂各1本)
⑩ライター(風に強いターボライターが便利)
<揃えなかったもの>
①菅笠(日よけ雨よけ)
②金剛杖(弘法大師が宿ると言われる)
③判衣、納経軸(納経帳と同様に御朱印を頂く)
④山谷袋(線香や納経帳等が納めやすい)
⑤持鈴(煩悩を払う響きと道中の獣よけ)
特に決まりは無く、お遍路の巡り方や移動手段は人それぞれなので、自分にとって必要なものを揃えるだけで十分との事です。私が揃えたもので費用は約15,000円。ロウソクと線香は途中、買い足しました。
事前に「四国遍路ひとり歩き同行二人(地図編)(解説編)」を購入し、作法など内容を確認していましたが、特に「歩き遍路」でなければ、お寺で無料で頂ける「四国遍路(作法とお経の意味)」の内容で十分かと思います。
参拝の作法
01.山門門前で合掌、一礼して境内に入ります
山門は俗世界と聖界とをわける境界です。帽子は脱ぎましょう(菅笠はそのままでOK)
02.手水舎で柄杓を使い手と口を清めます
①左手 ②右手 ③左手に水を取り口をすすぐ ④柄を立て残りの水で柄を清める
03.鐘撞堂で鐘を一度突く
お寺により突くことを禁止しているところもあります。最初に突くのを忘れていたからと、帰りに突く事は「出鐘」と言われ良くないとされています。
04.本堂で納札を納める
巡拝者の名刺に相当する「納札」を納札箱に納めます。その日にお詣りする予定の「お寺の数×2枚」を事前に書き込んでおくと慌てなくて済みます。
05.本堂にロウソクと線香をあげる
納経前の準備と供物としてロウソクと線香を供えます。ロウソクは1本(後からの人に配慮し奥から立てるのが礼儀)、線香は3本(後からの人に配慮し出来るだけ真ん中から立てるのが礼儀)たてます。
他のロウソクから火を頂くことは、その人の「業」を貰うので良くないとされます。3本の線香は「天、地、人」「過去、現在、未来」「仏、法、僧」を表すそうです。
06.本堂でお賽銭を納める
額に決まりはなく、お寺へのお賽銭はお金への執着心を排除し、煩悩から離脱する「修行」を表す意味、神社へのお賽銭は人は生きている中で罪を犯し穢れるため、穢れを祓いにより清めることで罪は許されていく、その「償い」の品を神前に差し出す意味と言われます。
07.本堂で納経
お経を書いて納めることが本来ですが、読経での納経が認められています。「仏前勤行法則 経本」に分かり易く記載されています。
<読経の順番>
①開経偈(かいぎょうげ)
②懺悔文(ざんげもん)
③三帰(さんき)
④三竟(さんきょう)
⑤十善戒(じゅうぜんかい)
⑥発菩提心真言(ほっぼだいしんしんごん)
⑦三摩耶戒真言(さんまやかいしんごん)
⑧般若心経(はんにゃしんぎょう)
⑨本尊真言(ほんぞんしんごん) ※
本堂のみ各寺の御本尊の真言を唱える
⑩光明真言(こうみょうしんごん)
⑪大師宝号(だいしほうごう) ※
南無大師遍照金剛(なむだいしへんじょうこんごう)
⑫回向文(えこうもん)
これらを「本堂」「大師堂」の2ケ所で行います。私は主に赤字の納経と祈願を行いました。時間の余りない人は「※」の「本尊真言」と「大師宝号」の二つでも良いそうです。
南無大師遍照金剛の「南無」 は神仏の教えに従う、「大師」 は仏の敬称、「遍照金剛」 は、空海が授かった名前で、弘法大師の教えに従うという意味になります。
08.大師堂納札を納める
大師堂の前に設置されている納札箱に入れます。
09.大師堂にロウソクと線香をあげる(05と同様)
10.大師堂でお賽銭を納める(06と同様)
11.大師堂で納経(上記07と同様)
読経では太子堂のため、本尊の真言を省略します。
12.納経帳にご朱印をいただく
納経料(納経帳300円 納経軸500円 判衣200円)
御朱印×@300×87ケ所=26,100円
御朱印×@500×1ケ所=500円(12番焼山寺)
13. 山門門前で合掌、一礼
車中泊・くるま旅のメリット・デメリット
<メリット>
①時間を有効につかえ行程が組み易い機動力が魅力
立地や天候の影響を受けることが少なく、自分で移動の時間をコントロールし易いため、限られた日程でも行程を立て易く、途中、観光やグルメなど組合せが容易になります。
納経所は 朝7時~夕方5時までのため、7時の開門と同時にお詣りする事も出来易くなり、組立方次第では、7~10日程度で八十八カ所を巡ることも可能かと思います。只、折角のお遍路ですから、納経帳をただ埋めるより、お寺の歴史や見所、会話を楽しみながら巡りたいものです。
②行程の変化に臨機に対応が可能
お寺は比較的近い場所に点在していることもあれば、70km以上離れていたり、険しい山の上だったりと様々です。そのため予約した宿泊場所まで辿り付けない場合もあります。逆にかなり安全目の移動行程だと日程が多くなったり、余った時間がもったいなかったりします。車中泊を中心とした「くるま旅」だと、臨機応変に無理せず行程の見直し・変更ができ、気持ちの余裕も大きいと思います。
③リーズナブルな費用
車中泊が可能ならば費用を旅先のグルメや観光に充てたり、滞在期間の延長などの見直しも、し易いかと思います。
<デメリット>
①お寺までの道は難所が多い
すれ違いが難しい道だったり、ロープウェイなどの公共交通機関や徒歩でなければ辿り付けない場所もあります。およその道場を感覚的にでも事前にグーグルマップで道幅等を確認しておく事をお勧めします。
またナビは最短コースを案内することがありますが、その道はとても狭い可能性もあります。今回、ナビに従い身動きが取れなくなった事も数度ありました(苦笑) 基本は道路上の大きな看板に従うのが無難だと思います。
ハイエースで断念したお寺やとても厳しい道だったお寺を記載します。
<難所と感じたお寺の一覧>
10番札所 切幡寺
門前町道幅狭く軒に接触しそう。阿波市役所側からのアプローチならOK!
15番札所 国分寺
ナビに従い直角路で身動き取れなくなりました。幹線道路の大きな看板に従って下さい。
21番札所 太龍寺
軽自動車・バイクであれば旧道で山門近くまで行くことが可能です。太龍寺はロープウェイ使用が基本です。
35番札所 清瀧寺
すれ違い出来ない細い道で、樹木が垂れ下がった背が高い車は木々に接触しそうな道が約1km近く続きます。
41番札所 龍光寺
お寺進入道路付近の「稲荷神社の鳥居」に接触しそうです。地元の方に教えてもらい約500m先に停めて歩きました。
※私個人の感想であり運転技術に優れた人であればそうでないかもしれません。ご参考まで。
②暑い時期は気温次第で厳しい車中泊になります。
暑くて睡眠不足になるようでは運転に支障が出たり、体調不調になりかねません。お寺によってはかなり距離を歩く事があります。気候の良い時期を選んでお遍路するようにしましょう。お勧めは春~初夏、初秋~晩秋でしょうか。
その他
①標高の高いお寺もあり、山岳地帯は早い時期に積雪する事があります。今回、11月21日に岩屋寺に向かう際の峠道(幹線道路では無い)で、10cm以上の積雪で進めなくなり引き返しました。
四国の山道はとても狭いところが多く、ナビに従った最短ルートだと厳しい道を案内したりします。時期によっては早めのスタッドレスタイヤの着用や大きな車は出来るだけ幹線道路の通行が無難だと思います。
②お賽銭を仮に5円とした場合、88ケ所×(本堂・太子堂)最低でも176枚が必要になります。「本堂」「太子堂」以外にも「鐘撞堂」に賽銭箱が置かれていたり、そのほか不動明王等々を、お祀りした堂も多いので事前にしっかり余分の枚数を準備してお遍路を巡りましょう。
お寺によってはお賽銭の両替表示があり両替可能なところもあります。表示のないお寺でも確認してみると「小銭→お札にするのも、今は手数料がかかるのでこちらも助かります」と両替頂けるところもありました。
③ロウソクや線香をつける際に多少の風でも着火するように「ターボライター」を用意しておくと非常に便利です。100円ショップで購入できます。