災害時の車中泊・防災シェルターとしての活用
日本は地震・台風などの自然災害、昨今は線状降水帯(ゲリラ豪雨)などの被害も多くあります。私は仕事の関係で「防災士」の勉強をさせて頂く機会もありました。車中泊に適した車や装備は、防災シェルターとしての役割も期待できると考えています。
災害の発生
災害発生から最初の72時間が重要と言われています。72時間とは政府や自治体等、行政の救援が被災者個々に届くためには72時間を要すると言う意味と、72時間が生存率が急激に低下する分岐点となっていることから、救出・救助のデッドラインも表しています。
例えば地震を例にとると
①命を守る時間帯 | 地震発生00分~02分 | 自分の身を守る |
②二次災害を防ぐ時間帯 | 地震直後02分~05分 地震直後05分~10分 | 火の始末・出口の確保 我が家の安全確認 |
③まちを守る時間帯 | 10分~半日 | 隣近所の安否確認と助け合い |
④生活を守る時間帯 | 半日~3日 | 2~3日は自分でしのぐ |
⑤復旧・復興へ | 3日以降 | 本格的な復旧開始 |
基本は「自助>共助>公助」の優先順位で考え、最低3日間は「外部の支援がこない」ことを前提に、被災生活を乗り越える「備え」が必要になってきます。
衣食住の食料や水、衣類、衛生用品、薬など、家庭の状況(人数や年齢、持病等々)に応じ、必要な物が異なってくる為、ライフラインが寸断した場合を想定し、自宅にどんな代替手段があるかを確認しておくことが必要です。
住居が無事で通常生活が出来る事が一番ですが、サブシェルターとして必要な備品を積載した車中泊に適した車であれば、防災シェルターとして機能する事も可能だと思います。
内閣府は過去の例によれば、災害発生からライフラインの復旧まで1週間以上かかるケースがほとんどの為、約1週間の備蓄品を推奨しています。尚、トイレが車に無い場合、簡易トイレや目隠しテント(屋外使用)の確保があればより安心です。
必要な食料品や備品は・・・
自宅に保管する備蓄品とは別に分散して車両に積載しておくことで、通常の車中泊での使用や非常時のシェルターとして機能する事が可能です。私は主に下記を車両内に用意しています。
<食料等>
・水(ポリ16ℓ+ペットボトル2ℓ×3本)
・茶(ペットボトル2ℓ×3本)
・米(無洗米2kg+パックご飯)
・缶詰(魚・肉・あずき等)
・レトルトカレー、味噌汁、シチュー
・ゼリー(ジェル×6ケ)、ナッツ類
・羊羹、乾パン、餅等
・ベビーチーズ、ハム等(常温保管)
・各種調味料
・サランラップ、ジップロック
主に「くるま旅」での食事やアウトドアを楽しむ為の行動食を常に積んでいる状態ですね。
ページ趣旨から少し外れますが、出発する際には上記にプラスして野菜をカットしたものを積込、不足した際には出先で購入します。
おすすめしたい備蓄品のひとつは「無洗米」です。
夫婦2人で3日間を一例で試算すると、パックご飯(2人×3食×3日間)18ケが必要です。かなりの保管スペースを必要としますね。私は「くるま旅」に出かける際、パックご飯の保管スペースやゴミを考慮し、ポータブルバッテリーで「無洗米」を炊飯器で炊いています。
ざっくりですが、無洗米2kg≒13.3合 13.3合を換算すると、パックご飯200gだと約27個分、150gだと約36個分。費用もパックご飯200gを仮に @200円とした場合、@200×27個=5,400円 無洗米2kgが約1,000円ですので、その差は約4,400円となり、150g パックご飯だと、その差はさらに大きくなります。
<ポイント>
・省スペースでの保管が可能
・美味しく食べる
(温かい食事は緊張感や不安も和らげます)
・飽きにくい工夫があると良い
・コスト(省スペースで安価)
私は「無洗米」「ふりかけ・お茶漬け」「調味料」「缶詰(魚類・肉類・小豆)」「瓶詰(鮭・鯖フレーク)」「カップ麺」「餅」「ホットケーキミックス(粉)」「パスタ(早ゆでタイプ)」等の、常温保管可能な商品を夫婦2人分、約5日分以上を車に備蓄して「くるま旅」で使用しています。
調理は基本、ポータブルバッテリーでコンパクト家電を使用し、使用した電力はソーラや走行充電で補充しています。詳細はポータブルバッテリ-のページをご覧下さい。
これらの備蓄品は気温や直射日光による品質劣化の影響を受けにくい場所での保管や賞味・消費期限に注意が必要です。期限がくる前に「蓄える→食べる→補充する」ことを「ローリングストック」と言い、また「日常時と非常時という時間的なフェーズをフリーにする」という「フェーズフリー」という考え方があり、日常、防災用品は押入れに保管し非常時に取り出して使うのではなく、日常、使用・利用しているものを非常時にも役立てるといった点です。
キャンプ等アウトドアが趣味な人は共通するところが多いのではないでしょうか。フリーズドライの食品もアウトドア用品店やスーパーでも扱っているので、色々食べてみて我が家ならではの備蓄品を揃えてみては如何でしょうか。
プライバシー空間の必要性
避難所等は合同生活のため、長期にわたる場合、様々な事がストレスの引き金となる場合があります。
①プライバシー(目隠しがない、会話や生活音が聞こえる、睡眠不足等)が保てないストレス
②暑さ寒さ、臭いなど環境によるストレス
③トイレの衛生面(不衛生・臭気等)のストレス
通常、指定避難所が開設時には、避難所マニュアルに基づき、行政と避難所組織が連携してルールの運用等、統制を図りますが、災害規模が大きいほど、避難所内の設営が遅れたり、物資の不足、ルールの周知が行き渡らず、統制がとれずストレスの高まりと共に様々な問題が発生する事は容易に想像がつきます。
又、小さなお子様がいたり持病のある高齢者など家庭環境は様々です。避難所はスペースが限られているため、完全なプライベート空間を確保することは難しく、周りに配慮する事も相当なストレスになることが想像できます。
エコノミークラス症候群
避難所では24時間、多くの人との共同生活を余儀なくされ、視線を遮る事が出来た場合でも周囲の会話や物音までは止める事が出来ず、長期間続くと、大きな心的ストレスがかかります。
「エコノミークラス症候群」は、ストレスや水分不足の状態で身体を伸ばす事ができない状態が長時間続くと、血管内にできた血栓によって血流が阻害され最悪亡くなる場合があります。
東日本大震災でも車中泊や避難所で手足を伸ばしにくく、水分が取りづらい状態が続いた結果、亡くなった方も数多く報告されています。
車内でフラットに横になるなど手足を伸ばすことが出来、必要な装備や備蓄品も備わったキャンピングカーやバンライフ可能な車両は他人からの視線を遮り、プライベートな空間を確保しやすい事から、ストレスの緩和や「エコノミークラス症候群」発生を抑制できる側面もあると考えられます。只、暑さ、寒さの影響を受けやすい点もありこの点は装備や配慮が必要となります。
ペットについて
ペットの受入れ態勢は避難所によって異なり、飼い主とペットが「同じスペース(同行避難)」で過ごすことが可能な所と「人とペットは別々のスペース(同伴避難)※多くがこのケース」で過ごす、「受け入れ自体が不可」な場合の3つのパターンです。
私も動物が好きで犬や鳥、熱帯魚など様々な生き物を飼ってきました。家族として愛情を注いでいる方も多いと思います。
只、避難所では24時間、多くの人との共同生活を余儀なくされる為、下記の事項についても考慮・配慮を求められる状況がある事を理解しておくことが必要かと思います。
①鳴き声 ②アレルギー ③臭い ④動物が苦手なひと
上記と同様に必要な装備や備蓄品も備わったキャンピングカーやバンライフ可能な車両はペットと一緒に避難しやすい側面もあると思います。
用意しておくと安心な装備等
これまでの車中泊の経験から飲料水や食料品以外に私自身は下記の備品等があると、役にたつと考え車に備えています。ご参考になれば幸いです。
これまでの車中泊の経験から飲料水や食料品以外に私自身は下記の備品等があると、役にたつと考え車に備えています。ご参考になれば幸いです。
①カセットガスコンロ・カセットガス
カセットガスは冬期大人2人で約1.5本(1日)の目安。3日間だと約5本、7日間だと約10本になります。
食事や飲み物だけの暖めだけでなく、入浴も出来ない場合、ぬるま湯で頭を洗ったり、体を拭く為に役立ったりします。
②ポータブル電源・ソーラパネル
用途によりポータブル電源の容量を決める必要はありますが、私は「Jackery ポータブル電源 1500」を使用しています。
426,300mAh/1,534.68Whの大容量に加え、1,800Wの定格出力に対応しているため、ホットプレート、炊飯器、電気ケトル、ポータブル冷蔵庫、扇風機、電動ドライバーなど消費電力が1,800W以内の電化製品を使用することができます。
1番の魅力は天候にもよりますが、ソーラパネルと組合せることで使用した電気を補充する事ができ、カセットコンロと併用する事で安心度が高まります。詳細はポータブルバッテリ-のページをご覧下さい。
③簡単な調理器具(湯沸かし用)
私は車中泊用の調理器具に加え、 バイクツーリング用のクッカーセットを車に積んでいます。積載スペースがよりシビアなバイクだからこそのコンパクトさが助かります。
④車載用マルチ炊飯器
DC(直流)12V(エンジンを掛け、シガライター使用)、AC(交流)100V(災害時にはポータブル電源使用)で稼働するタイプがあります。
私が使用している機器は、お米の炊飯と同時に煮物や汁物も出来るタイプです。
⑤車載冷蔵庫
季節にもよりますが、夏の暑い時期には冷たい飲み物を適度に体に入れる事で、体内温度をさげる事ができ、熱中症対策にも役立ちます。
⑥携帯トイレ(簡易トイレ)
避難所のトイレはその殆どが水洗と思いますが、災害時には断水になる事も多々あります。
その結果→流れない→溜まる→不衛生→感染症等のリスク等にも繋がる事が、これまでの実例から報告されています。
災害時は体力やメンタル面でも疲労から免疫力も低下している事も多いため、集団感染のリスクが高まったり、不衛生なトイレに行かなくて済むように水分や食事の摂取を控えたりすることで「エコノミークラス症候群」や膀胱炎を発症するなどの健康被害が報告されています。
家族用に簡易トイレや処理剤を備えておくと安心に繋がります。
⑦シェード(目隠し・断熱・防犯)
プライバシーが保たれるだけでも大きな効果が期待できます。
また、寒暖対策にもなりますが、反面、籠った熱が逃げない場合があるため、適度に外気温を確認しながら温度の調整が必要です。
⑧車載用扇風機(首振り機能付)
私の車中泊では、風の少ない熱帯夜など「MAXFAN」と併用して一番活躍しているかもしれません。
USB接続の為、通常は車に備え付けのUSBから電源を供給していますが、車から移動する際にはポータブルバッテリー(50,000mAh)と接続してキャンプでも使用しています。
⑨網戸(防虫・風取り用)
ホームセンターで売っている網を窓ガラスのサイズより少し大きめにカットして、ガムテープやマグネットで固定する事でも対応出来ます。
換気扇とセットで風の流れを車内に作る事で夏場の暑さ対策や換気する事ができます。詳細はこちらのページをご確認下さい。
⑩シュラフやブランケット
夏場と冬場で使い分けしますが、私は外気温、車内温度によって、スリープレイヤリング(寝具の重ね着)をしています。
例えば初秋はブランケット・薄手の毛布、冬期はオールシーズンシュラフ+ブランケット等、ブランケットは少し寒い屋外でゆっくりする時も膝に掛けたりする事も出来ます。
私は時々キャンプもするため、寝具の車内スペースの節約も兼ねてシュラフとレイヤリングしますが、家庭用の毛布等でも問題なく使用できます。
⑪救急セット(服薬など各家庭の実情に合わせて追加)
私はアウトドアでの軽度の怪我や虫刺され等を前提としたキット「消毒液・包帯・絆創膏・ポイズンリムーバ」「整腸剤」「頭痛薬」「風邪薬」「ステロイド外用剤」「湿布」「アルミブランケット」「カッター」「ヘッドランプ」「ライター」等を収めています。
⑫ガムテープ類
万能の使い方があるので、1つ用意しておくと便利ですね。私は切りやすく、粘着力も比較的高い「台風防災テープ」と耐水性の高い「ゴリラテープ」の2つを準備しています。
⑬携帯水タンク
ホームセンターや100均でも購入できます。日頃は折りたたんで収納していて、各地の名水を汲んで珈琲を飲んだり、キャンプ場で使用したりしています。
まとめ
比較的快適に車中泊可能な車両が災害時にシェルターとしての活用方法がある点についてご紹介しました。
①災害発生から3日間(72時間 or 可能ならば1週間)の被災生活を乗り越える飲料水と食品備蓄
②手足を伸ばせるプライバシースペースの確保
③安心な装備品の準備(家族で話し合いリスト化)